水屋箪笥ってなんですか?民芸家具への入口へようこそ

水屋箪笥、和茶棚って言い方も良く聞きます。水屋という言葉は水を扱う台所全体のことを指してたようですが、いつしかそこに置いてある食器類を入れる箪笥のことを水屋(箪笥)と呼ぶようになったそうです。ようするに食器棚、ダイニングボードのことなんですが、現代のダイニングボードには無い重厚感と懐かしい温もりが感じられます。和家具調の趣のある食器棚全般を示す場合もあります。このような和家具にたどり着くにはいくつかのアプローチがあると思います。家具としての完成度、価格にも相応の差があります。一般的に和家具としては以下の種類があると思われます。
●本物のアンティーク家具で本格的なレストアを施した物
●単なる古家具をクリーニングして販売している物
●伝統的な木工技術で製作された現代の民芸家具
●一般的な現代の家具だが、見た目が和家具風の物
●東南アジア等で製作された安価の「なんちゃって和家具」

もし和家具・民芸家具が気になるなら水屋箪笥からはどうですか?

もし和家具が好きになり、和テイストでいろいろ揃えて行きたいとお考えなら、まずは水屋箪笥(食器棚)からはじめて見たらどうでしょうか?
なぜって?だって民芸家具の主力である民芸箪笥類は現代生活に全くマッチしないからです。皆様は民芸箪笥と言われる引出しのたくさん付いた箪笥や階段箪笥という階段みたいな箪笥をどこかでご覧になったことがあるでしょう。なかなか趣のある家具ですが、若いご夫婦やマンション住まいのご家庭でこの手の家具がマッチするシーンはどれほどあるでしょうか?
そもそも分譲マンションや一戸建て等ではクローゼットがあるのが普通なので、箱物と言われる収納家具は現代ではニーズが少なくなっています。しかも民芸箪笥は大きさや形状も現代の住宅事情に合わないので一般家庭での実用面を考えるとほとんど出番がありません。
唯一、実用面で現在もニーズがある箱物家具、それが食器棚であり今回オススメしている「水屋箪笥」なのです。
ただし、ひとつ問題があります。実は民芸家具の中で水屋箪笥の占める割合というのは実は大変少ないのが実情です。民芸家具メーカーのラインナップを見ても昔ながらの箪笥が中心で水屋はほんの一部となっています。まあ、伝統も大切かもしれませんが、もう少し現代のニーズを掴んだ商品開発をして欲しいなあと思う次第です。紹介すると言っておいて実はほとんど無いという…すいません。
水屋箪笥の和テイストは以前ご紹介した「飛騨高山家具」や「旭川家具」系の和モダンはもちろん、実は北欧家具系のデザインとも相性が良いことが知られています。まあ、そこら辺は皆さんのセンスの見せ所ですし、それがまた楽しいわけですが…。

民芸家具のブランドをチェックすることをお薦めします。

ほんの一部になりますが、素晴らしい民芸家具を製造しているブランド・メーカーをご紹介します。伝統の匠の技と良質なケヤキ等を贅沢に使った本当に素晴らしい作品を製作しています。

筑後民芸家具

九州の筑後川下流で始まった筑後民芸家具。1530年代からの歴史があると言われています。良質なケヤキ材を伝統の技で一品一品丁寧に作られています。川野工芸というメーカーが商標を持っているようです。

岩谷堂箪笥

岩谷堂箪笥の起源は1100年代、藤原清衡の時代まで遡ります。最初は現在の家具とは違い、長持(大きな箱)のようだったと言われています。長い歴史を経て岩谷堂箪笥は「経済産業大臣指定伝統的工芸品」としての指定を受けるほどになっています。

仙台箪笥

江戸時代末期、伊達藩の下級武士が作った箪笥が始まりと言われています。明治時代に入りそれまでの武士が技術を活かして職人として仙台箪笥を作り始めました。やはりケヤキ材を中心とした昔と変わらない手作りで製作しています。仙台箪笥協同組合に複数の箪笥メーカーが加入しています。

北海道民芸家具

1964年に創業された日本屈指の民芸家具ブランドです。2009年にクラレインテリアから飛騨産業へと営業権が移り、ブランドと北海道工場を引き継ぎました。現在も北海道民芸の精神を守りながら生産が続けられています。